海のシルクロードの要衝地、スリランカ。シーギリアはスリランカ中央部に位置し、カンディの北北東72キロメートルのところにある絶壁の岩山に造られた古代城塞都市です。密林地帯の中にそびえる高さ約200メートルの侵食残丘の岩山は「獅子の山(シーギリア)」と呼ばれています。現在でも岩山の麓の部分に造られた獅子の前足の爪先を見ることができます。岩の頂にはかつて宮殿が造られていました。また、岩山には500体にもおよぶ天女の像が描かれていたといわれていますが、現存するのは中腹の窪みに描かれた22体だけです。腰から上を雲中から出す「シーギリア・レディ」と呼ばれる天女たちは、岩肌に塗られた漆喰の下地の上に顔料に樹脂を混ぜたテンペラ画で描かれています。
雲の上の天界を漂い散華(さんげ)する天女たちはインドのアジャンタ壁画のように隈取りして立体感を出し、身体をしなやかにくねらせています。赤・緑・黄の明るい色調でより肉感的に描かれています。おおらかで自由な筆使いによって独特の表現となっており、5世紀の壁画としては極めて貴重な遺産です。

 
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