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0071 羽田博士史学論文集 : vol.2
羽田博士史学論文集 : vol.2 / Page 71 (Color Image)

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doi: 10.20676/00000267
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るれども、回鶻字にてはかゝる
不便は存せず、只ソグド字にてのみ云なし、其の下に打たるゝ一箇の符點によりて區別せらるゝの
みなり、又特に回鶻字のS(一)字の由來を論じ、
に於て常に同一にして、連接によりて膨着することゝ少し、
と記し、又常に明かなる如く、基督教典及び佛教典に用ゐられたる中世ソグド語には、l音の存
⑩Adraus 氏の所論に明かなる如く、基督教典の同語には、dより發せるl音が存在し、JC(JC字にて示される古代トルコ族の遺文に認めらるゝが如く、初よ
せざるに反し、摩尼教の方言には溯るものとすれば、其の
り以て之を表はしゝが、此の字は中央亞細亞より發見せられたる古代トルコ族の遺文に認めらるゝが如く、初よ
同鶻にて表はしは1字として用ゐられたる由なり
とし、若し回鶻字がイランの根原にして正しくl音を知らざる方言、即ち基督教若しくは佛教ソグド語等より來れ
るものとすれば、此の事は説明し得べきに非ず、又回鶻字の根原が直接セミチック文字に溯るものとすれば、其の
文字の中にはTRS(補同上、AS)を有すべき筈なり、然も尚
之が摩尼教の方言に溯るものとすれば、根本的にはdの音價を有する文字がlを寫すに用ゐられ得べきなりと説
き、更に又回鶻字にては唇音及び喉音に屬する有聲音とdの無聲音、即ちpとb及びkとgが同一文字によりて表は
さるゝ理由を論じ、此の現象は回鶻文字がソグド文字を装だ異りたる音韻法に於て應用したるものなるを知らば、
決して怪しむに足らずとなせり。

回鶻文字考

三二