National Institute of Informatics - Digital Silk Road Project
Digital Archive of Toyo Bunko Rare Books

> > > >
Color New!IIIF Color HighRes Gray HighRes PDF   Japanese English
0177 羽田博士史学論文集 : vol.2
羽田博士史学論文集 : vol.2 / Page 177 (Color Image)

New!Citation Information

doi: 10.20676/00000267
Citation Format: Chicago | APA | Harvard | IEEE

OCR Text

註  解

(1)Suqančïy. 此の語はラドロフ氏譯の法華經普門品(Kuan-ši-im Pusar)の第百七十二行及び、同書に「大般若經の斷片?」として附錄せる殘經(卽ち此の八陽神呪經の斷片なること解題に於て述べたるが如し)の第三行目の兩所に出で、同氏は此の語については知る所なきを云ひ、只だ前後の關係上 ausgezeichen, angenehm, lieblich 等と譯せり(同書五十九頁及び九十九頁參照)、之を漢文に對照するに、普門品に見ゆるものは、「妙相」の「妙」に相當し、後者もまた本書第百三十五行に見ゆる「妙音響」の「妙」にあたるものなり。而して本書第百三十五行には、ラドロフ氏本の suqančïy の代りに tüzün なる語を用ゐたれば、兩語の意味は相等しきものなるを知るべし、tüzün は極めて普通に用ゐらるゝ言葉にして善良・善妙の意なれば、suqančïy も亦た同意にして、常に「妙」に對して用ゐられたるものなり。
(2)qudru tïnglang. 此の語もラドロフ氏譯の普門品第百七十五行目に見ゆ、たゞ同氏の音譯によれば前の語は qudnu にして、r と n との相違あれど、もとより同語にして、r の字が(ウイグル文字の)極めて n 字と紛らはしきより、或は氏の誤寫せられたるものには非るべきか、而して氏は之を qodïn の gerund form なりとして、hinter sich zurückklassen と譯せり(同書五十九頁)、されど漢文普門品に就て考ふるに此の二語は「汝聽」に相當するものにして、氏の譯出せる如き意は存せず、「汝聽」の語は tïnglang(卽ち動詞「聽く」の單數第二人稱命令法)の一語にて示せるものなれば、qudru には別に意味の存するものならざる可らず、思ふに此の語は此處に見ゆるが如く「諦聽」の「諦」に當るものにして、此の外にも百九十三行及び二百五十七行にも見え、等しく「諦」に對せしめたり。
(3)文字鈎然せざれども qolusuz なるべし、qolu は「永き時」に當る語なれば、ödsüz と同義の語を重ね用ゐたるものに外ならず。
(4)文字続けて明らかに讀む能はざれども、第八十七行の例に就て考ふれば、必ずや bititsär なるべし、此の語は bitmek(書く)の causative form にして、「書かしむ」の意なり。
(5)此の語はミューラー氏の Uigurica, I. S. 58. に šmnu と見え、從來 šimnu 或は šumnu の形にて、只だ蒙古語にのみ存すと認められたるものなり。
(6)äv barq. 此の二語は漢文の「家」或は「宅」なる語に對して、常に重ね用ゐらるゝものにして、本書に於ても此の外第五十八行、第七十五行、第二百三十七行、第二百八十三行、第三百七十二百三十行等に其の例を圖ぬべし、而してルコック氏ミューラー氏等皆之を Haus und Hausrath と譯せり、barq は bar+q の形にして bar