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0323 羽田博士史学論文集 : vol.2
羽田博士史学論文集 : vol.2 / Page 323 (Color Image)

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doi: 10.20676/00000267
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115行以下卷來、その五十六行は概して對觀福音書 (Synoptic gospels) に據つて、マリヤ懐姙の事より、耶蘇の生
涯の梗概を述べ、且つ多少乞を敷衍したものである。此の間にも難解の字句多く、文字の脱脱も多いこと繁雑が、
その大意を取ることは左程困難ではない。委しい讀解はここには避けて、たゞ此の間に於ける特種の語について管
見を施すことゝする。

先づ注意すべきは初めの「涼風」といふ語である。此の詞はこの續きなる 116 117 行等の外、別に 134 行にも見え、馬
太傳及び一神論書に比較して見れば直ちに解し得らる。通り、聖靈 (Holy Spirit) の事をいつたもので、摩尼教の演
譯典及び一神論書に同一語を用ひて旣交明子匪玉に見えてゐる。神と
か靈とかを風に喩へることは聖書中にも諸所に見え、例へば輪傳八ノに「風は己が任意に吹く」と記されてゐる。此の殘卷の初めの
ども何處より來り、何處へ往くことを知ず、すべて靈によりて生ずる者も此の如し」と見え、殊に 12、13 行に「世間人等難知風動、唯只
部、即ち 6、7 行以下にも、「天眷顔容似風、何人能得見風」であらう。
聞聲聽、一不見形」とあるのは此の一節に應ずるものであらう。

末覺 116、117、120 此の二字の唐代の音は miwi miwi miwi ɣ̃ɑŋ であつたらう、そうして勿論聖母マリヤの音
譯であることは普通の說であるが、唐に來た景士には諸國の人があつた事であるから、此等の人が必ずしもジリヤ
のであることは普通の說であるとして何れの國語からこの形を寫いたものであらうか。景典が本來シリヤ語で書かれたも
語を基にしてかゝる音譯を施したものとは限らない。但しシリヤといふ言葉は古いシリヤ語から、また近時の聲調こ
依つて得られたソグド語パラヤ語等で書かれた景典に於ける㊟ しリヤといふ言葉は古いシリヤ語から、此等の語で、また近時の聲調に
景教經典所覽に就いて