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0626 羽田博士史学論文集 : vol.2
羽田博士史学論文集 : vol.2 / Page 626 (Color Image)

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doi: 10.20676/00000267
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五六四

る寫眞事業の爲には、往年奉天に於ける程ではなかつたにしても、巴里の
十一月といへば陰雲に低迷の時雨時節で、晴れたと思へば近くまた曇る。相間側を重ねなければならなかつた。友人の斡旋で日佛銀行の一室を寫眞撮影場
として借用したが、この銀行はその頃の自分の寓處とは相當距離があつた。無論照明裝置などは用ゐず、太陽の光
にのみ依頼する素人寫眞である。天氣を見込んで大切の本と寫眞機と車に積んで馳けると私に薄暗く曇つて来
る。けふも駄目と諦めて引き上ずると面憎くも青空になる。また大出す。また天氣と相撲を取るやうなものの
だ。現像して見ると縁に書物が出るふやうな有様で、少からず惱まされた。それでも兎も角至急と寫
し了つて、期限内に借用した時にはホッとした。今東洋文庫に備附けのフィルム原板は、此の時の記念であ
る。

この種類のこと、思ひ出で語り行けば際限もない。與へられた原稿中十枚の範囲ではその一部分の詳述もいか
しい。別に他日の探訪記に譲らねばならぬ。探訪したすべてが狭い範圍の自分の研究に役立つのではない。

〔學燈四十年大典、昭和十一年九月六日〕