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0642 羽田博士史学論文集 : vol.2
羽田博士史学論文集 : vol.2 / Page 642 (Color Image)

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doi: 10.20676/00000267
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莫斯科抄書の思い出

此の數日來なぶって居る經世大典の站赤門、この寫本を引っぱり出すたびに、今からいへば二十二年の昔、モス
コウの數日の空で、自分ばかりか他人をも煩はした活劇(?)の記憶がまざんと蘇み返って来る。一九一四年八月、
二十八日といへば、歐洲大戦の序幕に世界中の人氣が昂ぶり切った時で、殊にモスコウではツァールがペチェルブ
グから行幸して、宣戦理由を布告した後間もない時で、日本の兵隊や武器がこ
こを通って戦線に向ったとか、噂が噂を作るのに忙しく、仕事などは殆んど手につかぬ時である。ペチェルブルグか
ら自分がここに着いたのは、この日の朝であった。露都大典の站赤即ち驛傍門の寫本をモスコウに寄り道した主要の目的
は、この地のルミャンツェフ博物館に度に伏した經世大典の站赤門の寫本を一讀せられることを、或
る書物によって孫から知って居た爲だで、この度の訪露を機會にどうにかしてそれを一見しあはよくば、寫し取っ
て携へ歸りたいと思った爲で、常時のこんな興奮し切った雰圍氣とは、凡そそこはないものであった。それで「アル