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0741 羽田博士史学論文集 : vol.2
羽田博士史学論文集 : vol.2 / Page 741 (Color Image)

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doi: 10.20676/00000267
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た。あてもなし波止場の上の青草の茂つた岡を上つてゆくと、かなり肚大な絵物の遺跡があり、説明の建札には
聖ポール寺院の廃墟の波をわたつてある。その昔ポルトガルの勢力盛んなりし頃、朝な夕なにつくこの寺院の鐘の音が
眼下にはぐ海嶺の波をわたつてゐる。鳴り響いたポルトガル僧が偲ばれる。崩れ残りの煉瓦壁と銅板に彫りつけたのがあちこちに残つて
るのに、薄からぬ兒氣が青々と吹き上つてまつはり、屋根もない感じの床の間には、ふと見上げた壁間に「神父フランス・サビエールの遺
骸がゴアに移され埋められてあつた」と刻んだ銅板が横たへてゐる。漁夫フランス・サビエールの遺
ね、日本にも聖跡を訪ねたことが、何やら宿線の糸に鸞がれてゐるやうに思はれて、敬虔な氣持に身を委
なくこの聖跡を訪ねたことが、何やら宿線の糸に鸞がれてゐるやうに思はれて、敬虔な氣持に身を委
やりに、ポケットから三四枚の日本紙をとり出し、鉛筆に触れを刻り出して銅板の女字を取るものゝ、持ちまへの紙片
である。その後の二十數年を通してそのままに保存し、折にふれて見ては追懐に耽るもの、神父の靈に對しても
精で、今に裏打ちやらもしてないこのていたらくが、とうく惰い魔物に汚されてしまつた。神父の靈に對しても
申しわけないやうな氣がする。珍藏の拓本をずたゞくに喰ひ割いたり、よりによつて大切な書物を汚損し
貝にはこれまでも數々の恨みがある。不遜にも枕頭に跋躙したり、その他一々を挙げられた惡行、何とも始末におへぬ代物である。度々の受難にこりてせめて書齋だけは、出來る限りの防備を固めて侵入の隙なからしめたいと思ふが、
ある惡魔かと思はれる程に盛んを惡性を發揮して鼻をあかしにかゝる。要所要所にくばつて置置くと、藥をさかした餌を、書き拔き拔き搜しながら

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