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0743 羽田博士史学論文集 : vol.2
羽田博士史学論文集 : vol.2 / Page 743 (Color Image)

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doi: 10.20676/00000267
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をたつて中くらのが一匹走り出た、廐掃ひの追打ちに驚いて塀の上に飛び下つたのを、よしッと横に掃つたのが、目当て外れて、床板の間に飛び上つて右往左往する、廐掃ひの姿勢を整へる間に、ふと思ひ浮んだのが、いつそや新村博士から傳受の鼠退治の裏餌である。落ちつかねば仕損じると参職の位置より、三寸前を狙つて、力一ぱい打込むべしといふのである。あのやうかな新村さんが度々の對鼠職からあみ出された必勝の職術だといふので、成程と感嘆し、折かかつてやうとかねん〳〵思つてゐたが、今こそ役に立つことになつたのである。機會をつかんで、こそ許りに打ちやつしたのであつたが、アーそれがいけなかつた。「三寸前」に夢中になつて、鼠のゐる天井を打つて来た娘は、大事の愛のてしべんを見事に叩いてしまつた。もう鼠どころではない、泣き声をきかせて褌を開けて入つてくる娘は、打のめされた管の鼠の代りに、青い激の身と頭とを左右の手にして、音を論割れ目の痕つた症物を見出したさうである。割れた壺はなんと掻き合せはしたものゝ、勿き好しそうな相好を見出しているのも嫌になつて片付けてしまふ。それ以来見るのも嫌になつて片付けてしまふ。

書き扱きを捜しながら

うして取り出すこともあるのである。
とりとめもなことを思ひ出しながら、入舎に父鑑の中べたけれど、肝腎の抜書は矢張り見つからない。或はこれも難性の鼠が先廻りをして、巣の中にでもくは込んだのかも知れぬ。

(父藝春秋第三十六卷第十一號;昭和三十二年十一月)

六七九