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0189 伊犂紀行 : vol.2
伊犂紀行 : vol.2 / Page 189 (Color Image)

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doi: 10.20676/00000279
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民に與へ居る乎を観察するに實に虎を變じて駱駝に化するに似たるものの有り。
蒙古の歴史を繙かば直に蒙古人の猛悍兇忍なる民族なりしに一驚を喫するなるべし。彼の元朝の始祖成吉思汗が、一たび此の種族を率ゐて西方を侵略するや彼等の向ふ所悉く屍山血河の惨狀を極めざるは無く、其の殘忍暴實に言語に絶へたるものありしに非らすや。其の殺伐暴虐の性は漸く消磨し去りて然るに彼等一旦喇嘛敎に歸依するや。定に柔順な氣風力の性になりしたる。往昔は旅客を當年の猛復に見之を見るへからす。今は飢渇者を發見すれば直に之を殺戮し其の貨物を掠奪したる種族を見れば進んで飮食を與へふるの慈善者と窃れり。又喇嘛敎は中央亞細亞の各種族は古來干戈相見して交通貿易を得せしむるの媒介者と窃れり。蒙古西藏の各種族は一たび傳播し彼等ゆるのみにて彼等は常に彼等と同一の救主を戴き同一の信仰を懐くが故に常に相變り之に歸依して交通貿易の機を得、ざりし蒙古族の心裏に斯て有通ふ民族と窃れり。一戰を知つて平和を知らざりし蒙古族の心裏に斯る成化を與へたるは實に大乘佛敎の一派たる喇嘛敎の力と謂はざるを得す。

第五章 宗 敎

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