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『東洋文庫所蔵』貴重書デジタルアーカイブ

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0191 伊犂紀行 : vol.2
伊犂紀行 : vol.2
伊犂紀行 : vol.2 / 191 ページ(カラー画像)

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doi: 10.20676/00000279
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雖も之を統治する者あるに非らず單に彼等の中に古來傳承したる同一の口碑風
俗國語倆像崇拜の宗敎あて僅に彼等を支配したるに過ぎざるなも。
亞剌比亞人の住居したる土地は一望渺茫雜なる所謂亞剌比亞の大沙漠
にして天然の風物單調なるのみならず此地は荒れて農耕に適せず又外部の文化を
蒙ること少なき故に此邊に在る者は獨り天然を友とし同族を侶とするより外
なかりき。
然り斯る荒野に生息する亞剌比亞人には何等宗敎上道德上純潔なる趣味を有
せず彼等のふむ所は掠奪と私闘復仇に過ぎずして其の好む時期は酒色の歡
樂なり。唯彼等にて毎年一箇月間其の私闘復仇の惨劇を中止する所あり。即ち
此の時期の間にのみ平素反目嫌親せる者も手を携へて所々の靈場を參拜し
隨て同期間は渉漠の際商も亦掠奪さるゝ虞なく安全に旅行し互に市を行ひ相集り
置置酒歡樂をするを得たり。
西暦五百七十年亞剌比亞のメッカにマホメットは産れたも。マホメットの名
は或はムハメットとも云ふ。ムハメットとは亞剌比亞語にて救主の意盡し國人

第五章 宗敎

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