概要
2003年12月26日(1382年ペルシャ暦第5日)の午前5:28、マグニチュード6.3の地震がイランの古都バムの直下で発生しました。バムはカナート(地下水路)や日干しレンガ・ナツメヤシなどで有名で、イランの首都テヘランから南東ほぼ1000kmに位置する都市ですが、この地震によりバムの城塞(Citadel)「アルゲ・バム」は壊滅的な被害を受けました。
バムの城塞「アルゲ・バム」は、広さおよそ200,000平方メートルに達する世界最大の日干しレンガ建築群であり、また約2000年にもわたって人間が住んでいた場所でもあります。この歴史的な城塞は、城壁、塔、塁壁、数々の門、モスク(回教寺院)やバザール、テッキエ(宗教的広場)、キャラバンサライ(隊商宿)、学校、浴場、ズールカーネ(伝統的なスポーツを行う場所)、貴族や平民の家からなる居住区など、様々な種類の建築物から構成されていました。統治者区域には、兵舎や厩舎、製粉場、指揮官の家などがあり,そして統治者地区には統治者の家、四季迎賓館や望楼などがありました。
この城塞が誕生した年代については、アケメネス朝ペルシアからアルサケス朝パルティアにかけての時期(550 B.C.〜224 A.D)で諸説があります。ただ、地震の前まで残っていた多くの建築物は、ティムール朝からガージャール朝にかけての時期(1381〜1921)に建てられたものと考えられています。これらの部分的に残っていたものに加え、重要な建築物である金曜日モスク(大モスク)のイーヴァーンは、サーマーン朝の(ヒジュラ暦)4世紀からセルジューク朝の(ヒジュラ暦)7世紀頃に建てられたようです。そしてガージャール朝の頃には、人々はバムの城塞から撤退しました。
バム城塞にある多数の多様な歴史的建物、住居地区、丘への傾斜道にある建築物や、最高点に作られた四季向けの建物など、あらゆる建築群には定められた形があり、それらには建築と都市計画の観点から十分な価値がありました。そして現在よりも多数の住民階層の存在は、遺産全体に特別な考古学的価値を与えていました。バム地震の災難の後、ユネスコは2004年に「バムとその文化的景観」を文化遺産(危機遺産)に登録しました(UNESCO世界遺産センター)。そして2013年には、遺跡の管理と保全の活動が改善されたとし、バムは危機遺産リストから外されました(World Heritage Committee removes the Iranian World Heritage site of Bam and its Cultural Landscape from danger listing)。
これらの比類ない遺産は、地震の後に不幸にも荒廃しましたが、そこで城塞の物語が終わったわけではありません。イラン文化遺産観光庁の重鎮であった故ムハンマド・メフリヤール氏の言葉によれば、バムの地震は「建築家たちの哀悼と考古学者たちの結婚」でした。地震は、日干しレンガ建築物の下に埋もれていた地層を明らかにするきっかけとなり、考古学の専門家たちが調査のために雇われました。また建築家たちも、昔の建築から学び多くの教訓を得ました。城塞の一部や馬小屋、兵舎が大きな破壊を免れたことは、調査の切り口となりました。天井や丸天井の施工、そして屋根覆いに使われる鉱石の専門家なども、この機会を利用して歴史的建築物の理解を深めました。歴史的建築物がどのように地震に対応していたか、破壊された部分と無事に残った部分の要因は何か、建築家のための貴重な教訓が集められました。
バム城塞の建物は、あらゆる人々の所有物です。あらゆる人々とその子孫のためにこの建物を保存するには、現状を踏まえていかなる活動をすることができるでしょうか。このサイトは、この問いに答えるために、始まったものです。
目標
このウェブサイトはディジタル・シルクロード・プロジェクトにおいて、歴史的遺産の記録(ドキュメント)のためにバムの都市を助けるとともに、下記の目標を追求します。
- 価値ある歴史的遺産とバムの都市の記憶保存
- バムとその遺跡に関する情報の収集
- 世界中から情報を収集するためのコンピュータ環境の実現
- バムとバムの歴史的城塞に関する画像データやテキストデータ収集への公衆参加
- 記録(ドキュメント)のためのプラットフォームの構築、およびバム城塞とそこに関わる組織の修復と復興。
お願い
このウェブサイトの上記の目標の枠内において、バムとその文化的景観、とりわけバム城塞に関する画像やデータの収集に努めています。バムの偉大なる城塞とバムの歴史的都市に関する情報を拡散し普及させることにより、過去に発生したことの苦痛を減らすとともに、その記憶を不滅にしていきましょう。危機遺産リストの一つである世界遺産の保護に向けて歩を進めるために、地震の前後で目撃したものを、他者と共有していきましょう。ぜひご協力をお願いします。
アーカイブ
以下のページは、我々のもとに送られてきたデータ収集物を展示しています。
より専門的なデータについては、Bam3DCGにアーカイブしています。
研究成果
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Elham ANDAROODI, Asanobu KITAMOTO, "Online Ontology-Based Knowledge Representation of Historic Buildings: Publishing an RDF-Based Website", International Journal of Heritage in the Digital Era, Vol. 3, No. 3, pp. 475-499, doi:10.1260/2047-4970.3.3.475, 2014-9
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Asanobu KITAMOTO, Elham ANDAROODI, Mohammad Reza MATINI, Kinji ONO, "Post-Disaster Reconstruction of Cultural Heritage: Citadel of Bam, Iran", Proceedings of IPSJ SIG Computers and the Humanities Symposium 2011, pp. 11-18, 2011-12 (in Japanese)
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Elham ANDAROODI, Asanobu KITAMOTO, "Architectural Heritage Online: Ontology-Driven Website Generation for World Heritage Sites in Danger", Digital Heritage: Proceedings of Euromed 2010 (3rd International Euro-Mediterranean Conference), Lecture Notes in Computer Science (LNCS) 6436, M. Ioannides (Eds.), pp. 277-290, Springer-Verlag, doi:10.1007/978-3-642-16873-4, 2010-11
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Natchapon Futragoon, Asanobu KITAMOTO, Elham ANDAROODI, Mohammad Reza MATINI, Kinji ONO, "3D Reconstruction of a Collapsed Historical Site from Sparse Set of Photographs and Photogrammetric Map", ACCV Workshop on e-Heritage 2010, pp. 286-295, doi:10.1007/978-3-642-22819-3_29, 2010-11
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Elham ANDAROODI, Kinji ONO, Asanobu KITAMOTO, "Metadata-Based Terminology Ontology for Knowledge Management of an Architectural Heritage in Danger", Proceedings of the Conference on Virtual Systems and Multimedia (VSMM08), Vol. Full Papers, pp. 179-186, 2008-10
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Mohammad Reza MATINI, Elham ANDAROODI, Asanobu KITAMOTO, Kinji ONO, "Development of CAD-Based 3D Drawing as a Basic Resource for Digital Reconstruction of Bam's Citadel (UNESCO World Heritage in Danger)", Proceedings of the Conference on Virtual Systems and Multimedia (VSMM08), Vol. Full Papers, pp. 51-58, 2008-10
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Kinji ONO, Elham ANDAROODI, Alireza EINIFAR, Nobuaki ABE, Mohammad Reza MATINI, Olivier BOUET, Frank CHOPIN, Takashi KAWAI, Asanobu KITAMOTO, Asaka ITO, Eskandar MOKHTARI, Saeed EINIFAR, Seyyed Mohammad BEHESHTI, Chahryar ADLE, "3DCG Reconstitution and Virtual Reality of UNESCO World Heritage in Danger: the Citadel of Bam", Progress in Informatics, No. 5, pp. 99-136, 2008-3
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3 Dimensional reconstitution and virtual reality, Bam and its cultural landscape (June 07, 2006)
その他の論文につきましては、出版物・メディアをご覧下さい。
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地震前後の写真
早朝のバム城塞 |
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夕暮れのバム城塞 |
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3次元CG復元のウォークスルー映像
Governor Section (Hakem-Neshin) |
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From west of Saabaat House to Barrack |
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From Barrack to entrance ramp of Governor's House |
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Governor's House and Watch Tower |
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From fifth Defensive Wall to Chahar Fasl (Four Season) |
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