もともとこのアプリは、古写真の撮影場所を探すためのアプリとして作りました。古い写真を見たとき、この写真はどこの景色を撮影したものだろう、と疑問に思うことがよくあります。有名な場所ならすぐにわかるかもしれませんが、時代とともに風景が大きく変化した場所だと、すぐにはわからないかもしれません。一番いいのは、現地に行って過去の風景と現代の風景を見比べて、もっとも両者が一致する場所を探すことです。しかし、写真を印刷して(あるいはパソコンの画面に表示して)、自分の目で見える視界と見比べることは、決して簡単ではありませんでした。
そこで、今回開発したメモリーハンティングでは、過去の風景をカメラのファインダー上に半透明で重ねることにより、両者をファインダー上で直接的に比較できるようにしました。アイデア自体は単純ですが、スマートフォンのようにカメラのファインダーを自由にプログラミングできる環境によって、初めて実現できるアイデアと言えます。また、撮影時に写真のメタデータ(説明情報)として、緯度経度やカメラの方向などのセンサ情報を記録しておくことで、過去の写真がどこで撮影されたものなのかも、同時に解明することができます。つまり、古写真の撮影場所と現在の風景とを同時に記録するためのツール、それがメモリーハンティング(メモハン)の目的です。
現在では、対象を古写真に限定せず、災害の復興を記録する写真ツールとしても使っています。被災直後の風景と同じ風景をカメラで撮影することは簡単ではありませんが、メモハンを使えば風景の位置合わせが簡単になるため、定点観測を続けていくこともより簡単になります。メモハンはいわば写真のオープンデータに対する「フィールドワーク」のためのツールであり、スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスは、カメラと通信機能とプログラミング環境を同時に備えるデバイスとして、このような目的に最適なものです。写真に対するアノテーションを充実させ、それによって写真のアーカイブを豊かにしていく循環を作り出していく、そんな長期的な目標を考えています。
ディジタル・シルクロード・プロジェクトでは、過去の風景と現代の風景を見比べることを目的に、2種類のコンテンツを提供してきました。第一の方法が今昔写真です。これは、過去の写真に記録された風景と、カメラのファインダーから覗く生の風景とを見比べながら、撮影位置や画角などを注意深く調整し、両者が最も一致すると思われる点でシャッターを押す、という方式で作成したものです。この方法だと、視線を2種類の風景の間で往復させる必要があるため、想像以上に難しいということが実際にやってみてわかりました。
第二の方法が北京古景観です。これは、Google Earthというデジタル地球儀上に設定できる仮想的なカメラを活用し、ファインダーを覗きながらカメラの方向も考慮して写真を配置することで、両者の景観を直接的に比較できるようにしたものです。この方法だと視線を往復させる必要がないため、両者を一致させることはやりやすいと言えます。一方で、Google Earthは限りなく2次元に近い3次元空間であるため、立体的には両者の見え方が大きく異なるため、両者の違いを3次元空間で直接的に知覚することは依然として困難です。この点はストリートビューの活用等で多少は緩和できますが、仮想世界で再現された風景は現実世界と比べると情報量が少ないのが実情で、やはり現実世界での重ね合わせをするための道具が欲しいところです。
そこで、今回開発したメモリーハンティングでは、過去の風景をカメラのファインダー上に半透明で重ねることにより、両者をファインダー上で直接的に比較できるようにしました。アイデア自体は単純ですが、スマートフォンのようにカメラのファインダーを自由にプログラミングできる環境によって、初めて実現できるアイデアと言えます。また、撮影時に写真のメタデータ(説明情報)として、緯度経度やカメラの方向などのセンサ情報を記録しておくことで、過去の写真がどこで撮影されたものなのかも、同時に解明することができます。つまり、古写真の撮影場所と現在の風景とを同時に記録するためのツール、それがメモリーハンティング(メモハン)の目的です。
古写真を現在の風景と関連づける方法として、拡張現実(Augmented Reality)の方法もよく知られています。これはカメラのファインダーから見える風景に、古写真の風景を3次元空間内で位置合わせして表示するものです。この方法との違いについては2通りの説明方法があります。第一に、メモリーハンティングは実空間への重ね合わせではなく、ファインダーへの重ね合わせを使うという点が違うという説明です。Google Earthの用語を使って説明するなら、ARはGroundOverlayを使うのに対し、メモリーハンティングはScreenOverlayを使うという点に根本的な違いがあります。第二に、メモリーハンティングは拡張現実のためのデータ収集ツールであるとする説明です。メモリーハンティングは撮影位置に関するメタデータを記録できますので、その情報を拡張現実ツールやGoogle Earthに流しこめば、仮想空間上で過去の写真と現在の写真とを比較表示することもできます。
ある特定の風景は現地でしか撮影できないという特性を活用し、写真を現地に行ったことの証明として使う種類の活動は昔から存在する。観光写真のなかでも特に訪問すべき地点のリスト(四国八十八ヶ所や全鉄道路線など)が定められている場合、写真はそれらの地点をすべて訪問した証拠になる。
しかし従来のような観光だけでなく、そこにスポーツあるいはゲーム要素を加えた活動に写真を活用する試みが広まっている。それがフォトオリエンテーリングやフォトロゲイニングと呼ばれる活動である。いずれもある定められた地点(チェックポイント)を通過した証明として、従来のスタンプの代わりに写真を使う点が特徴的である。チェックポイントで撮影できる写真の見本があらかじめ示されているため、参加者は現地でそれと同じ景観を探して写真を撮影し、それを通過証明とする。
元のスポーツ競技であるオリエンテーリングやロゲイニングでは細かいルールが色々と異なるものの、実際の利用シーンではスポーツ競技のような厳密なルールを適用するわけではなく、ゲーム的要素をもつ観光の一環としてゆるく活用されることが多いだろう。その意味では、写真撮影という活動を組み込んだゲーム化された観光のバリエーションの一つとして両者を捉えることができるだろう。
こうした地点巡りのゲームとしては、近年ではIngressが有名である。Ingressでは「ポータル」と呼ばれる地点が選ばれており、それらのポータルに実際に行くことがゲームを進める上で必須の活動となっている。このようなゲームでは、GPS等による位置の測定に基づき、ポータルに十分に接近すれば通過証明になる。しかしGPSの代わりに写真を使うことは、写真を撮影する楽しみがあること、GPSを必須としないこと(もちろんあればダブルチェックできる)、単に接近するよりも同じ風景の写真を撮影する方がタスクとしてはるかに難しいこと、などの違いがある。